どうも。弓矢です。まずは近況報告(?)
ネタ切れ。
月2(前半1つ、後半1つ)のペースで記事を追加するのがちょうどいいのではと思いながら始めたこのブログ。5回目にしてネタが尽きた。そんなんだったらブログ担当引き受けんなって?御尤もです…
誤解のないように言っておくと、雑学はまだ提供できる。が、記事として成立させられるくらいの長さにはならないのだ。
周りで気になること、今流行りのことを掘り下げて欲しい、やってほしい企画、漫画・アニメを現実世界で考える(空想科学読本に叱られる?)等、アイデア募集中。
冗談抜きでヤバい。
さて、表紙絵で「やった〜!アニメネタだ!」と思った諸君。甘い!
そんな単純なものをネタにするほど陳腐なコーナーではない。
今回のテーマは「方言の解析と出身地推定」
転スラ日記 第8話
アニメが再びネタと化してしまった。今回は転スラ日記第8話。
方言解析をネタにしようと思ったきっかけがこれ。次の音声ファイルの女性の声を注意して聞いてみよう。
「生産管理担当、ゴブリンロード、リリナ。機転が効いて、働き者。何より美人で、非の打ち所がない。」というリムルの説明の直後、リリナさんが豹変する。そこで彼女が発した方言がこの音声ファイルである。文字に起こすと下のようになる。
ほんらほんらほんらほらぁ、そっごぼんつくども!
のーさくさしとっとー、あーっちゅう間に日ぃ暮れちまうど
リムル様のめぇで、こっぱずかしいなり見してはしゃーねぇー
ただんで刻んで、畑ん肥やっしーなっが?んぁ?んぁ?
ちゃーんとはてれーて、うんめぇまんま食いてぇべ?
そうだべ〜?
強烈な音便訛り。撥音便と促音便のオンパレードだ。母音の変化(省略)も多数見られる。
この第8話放送後、ネットでリリナの話す方言は何弁かというのが話題となっていたのだが、誰一人として言い当てている人がいなかった。日本全国遍く視聴者がいて、該当する地域が存在するはずなのに。
一応、音便の部分は()で元の言葉に戻し、方言と思わしき部分は「」で囲むと下のようになる。
ほんらほんらほんらほらぁ(ほらほらほらほら)、そっご(そこ)「ぼんつく」ども!
「のーさくさ」しとっ(している)とー、あーっちゅう(あっという)間に日ぃ(、)暮れちまうど(ぞ)
リムル様のめぇ(前)で、「こっぱずかしい」「なり」見し(せ)ては「しゃーねぇー」
ただんで(畳んで)刻んで、畑ん(の)肥やっしー(に)なっ(なる)が?んぁ?んぁ?
ちゃーんとはてれーて(働いて)、うんめぇ(美味え)まんま食いてぇ(食いたい)べ?
そうだべ〜?
訳すとこうなる。
ほらほらほらほらぁ、そこの馬鹿ども!
のんびりしていると、あっという間に日が暮れてしまうぞ
リムル様の前で、みっともない姿を見せたら大変だ
畳んで刻んで、畑の肥やしになりたいのか?え?え?
ちゃんと働いて、美味しいご飯食べたいよな?
そうだよな?
これで準備は完了。あとは音声ファイルをいろんな人に聞いてもらって、方言(と思わしき)箇所を聞き取れるか、意味を取れるかを聞いていけばいいのだ。
実験
協力者は以下の4人。ただし、以下の「育ち」というのは言語形成期(=小学生時代)に住んでいた地域を指すものとする。どうやら、人は皆この頃に聞き慣れた方言を生涯使い続けるらしい。
Ⅰ 新潟県新潟市出身、新潟市育ちの高校同期A君。
Ⅱ 富山県富山市出身、富山市育ちの高校同期B君。
Ⅲ 我らが主将、C君。東京都出身、東京都育ち。
Ⅳ ぽつあいメンバーであり、前期教養学部時代の同クラD君。大阪府吹田市出身、吹田市育ち。
このような人選にはちゃんとした理由がある。以下の図を見てほしい。
これはアクセントの種類別に日本を色分けしたものである。方言よりも訛りの方が地域が広範に及ぶと考えられるため、方言を突き止める以前に、アクセントから絞った方が有効な可能性がある。こういうわけで、アクセント形式の異なる4人を代表して選んだのだ。因みに僕は新潟県糸魚川市出身糸魚川市育ちなのだが…その中でも例外とされている青海町育ち。(新潟県で最も富山県寄り。図を拡大すると新潟県で唯一黄色い部分があるが、ここが青海町である。)
言語形成期に頻繁に青海町と糸魚川市街を往復していたので、京阪式アクセントと中輪東京式アクセントのハイブリッド言語を話せる(?!)らしい。理論上。
各被験者にした質問は以下の通り。
音声ファイルの女性の声の部分を聞き、
①話している内容が理解できるか(雰囲気としての解釈は除く)
②特有の表現(「ぼんつく」や「のさくさ」、「こっぱずかしい」、疑問詞語尾の「〜べ」等)を聞いたことがあるか、もしくは使っている大人(高齢者含む)を見たことがあるか
③訛り(アクセント)に聞き馴染みがあるか
を教えてほしい。
各問の意図はこうだ。
①言語形成期に慣れ親しんだ(ような)言葉が使われているか。方言であっても、語感から意味を理解できる可能性を検証する。
②使われている方言を母語とする人がいたか。方言が地元のものか、外部のものかの大まかな指標となりうる。
③図のアクセント分布に合致するか。
予想・仮説
方言と思われる言葉をピックアップする。また、各用語について、日常的に使っていると考えられる地方を記す。
・ぼんつく…新潟県田上町(新潟市に隣接)。検索でヒットした地域はここのみ。
・のさくさ…千葉県。房州弁?検索でヒットした地域はここのみ。とはいえ、語感で理解ができる範疇。
・こっぱずかしい…北海道、山梨、栃木。一般用語?
・なり…もはや一般用語。ただ、「姿」を表す語として第一選択肢にあがるという点では方言か。地方は特定できず。
・しゃーねぇ…「仕方がない」という意味で使うなら、訛りとしては全国的。「大変だ」という意味で使われるのは方言感あり。地方は特定できず。
・まんま…「ご飯」と言う時にこれが即座に出るのは方言なのか、時代なのか。僕の地元に「まんま」を普通に使う人がいたのは事実。また、新潟県田上町の方言の一覧には一応載っていた。
・〜べ…関東・東北の広範囲。疑問詞としての用法も存在。新潟県田上町の方言の一覧にも一応載っていた。
このことから問題の音声ファイルの方言の候補として3通りの説が考えられる。
⑴新潟県田上町の方言
⑵千葉県の方言
⑶その他
⑵については、関東ではなく、千葉とした裏の理由がある。今回、リリナの声優は近藤玲奈さんで、千葉県出身。かつ、エンディングにおいて方言指導者がいなかったということは、田舎くさいアクセントは近藤玲奈本人の感覚(アクセント)に由来するものと考えられる。
結果
列挙した単語が用いられている地方と被験者の出身地・生育地を比較しながら結果を見てほしい。
Ⅰ
①普通に理解できる。
②日常的に使う人はいなかった。
③聞き馴染みはないが、違和感はない。
Ⅱ
①「ぼんつく」は厳しい。他は分かる。
②「ぼんつく」や「〜べ」は使わないし、使用者も見ない。他の単語は日常生活でも使う場面はある。(一般用語では?という指摘)
③聞き馴染みはない。
Ⅲ
①マジ分からん。
②見たことない。
③馴染みはない。アクセントが語尾にくるところに違和感がある。
Ⅳ
①音便の箇所が少しだけ。あとは分からない。
②聞かないし、見ない。
③馴染みなし。
僕
①「ぼんつく」は聞き取り含め厳しい。他は普通に分かる。
②使わないし、見ない。が、辞書に載っている程度の一般用語では?
③聞き馴染みはないが、違和感はない。
「ぼんつく」の理解が要のようだが、Ⅰの結果から、新潟市近郊であれば使わずとも理解はできるらしい。新潟市から物理的距離が遠いほど理解できる幅が狭くなっているというように捉えられ、この点では仮説⑴を裏付ける結果となった。が、問題となるのは③のアクセントである。どの地域についても聞き馴染みがなく、リリナの訛りは、今回検証に用いたどのアクセント型にも当てはまらないことを示唆すると考えられる。これは仮説⑴⑵の両方を否定する要素となっている。
考察
今回、実験の対象となったアクセント型で日本のほとんどの地域は網羅される。それでも聞き馴染みがないということは、残りの地域(無アクセント地域や、九州二型、他、マイナーなアクセント型を用いる地域)の方言が考えられる。
「〜べ」が使われる方言としては会津弁も考えられるが、日本方言研究会の会津弁に関する研究(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~jginsbur/WebPresentations/DialectSocPres2013.pdf)では、会津弁において、疑問詞「〜べ」は下がり調子になることが分かっている。
また、「しゃーねぇー」で肯定文にもかかわらず上がり調子になるという特徴的なアクセントも該当地域は見つかっていない。(ただ、訛りとしての違和感がないのは事実であるし、「大変だよね?」という付加疑問という捉え方をすれば解釈は可能である。)
他にも、単語レベルで注目すると、「めぇ(前)」という言葉は名詞のアクセント的分類上、二拍名詞第4類に相当しており(だと思う)、京阪式と東京式ではアクセントが異なる。リリナの場合、「めぇ」と後ろを強く発音しており、これは京阪式アクセントに属する。しかし、これは矛盾。
今回のリリナのセリフで使われている単語・文法とアクセントが完全一致する地域の特定ができていないが、これにはいくらかの原因が挙げられる。主な原因としては、調査した母数があまりにも少なく、日本に存在するアクセント型を網羅できていないことである。また、同じアクセント型であっても、中国地方の東京式アクセントが関東地方のものとは異なる可能性は否定できない。
今回の被験者は全体的に東日本寄りであるが、これは、最初に僕がリリナのセリフを聞いた時の勘で、東日本の方言である可能性が高いという先入観によるものである。これにより、無意識的に西日本、特に兵庫以西の検証をしなかったということにも問題があるかもしれない。(そもそもそのような地域の人が身近にいなかったのだが)
結論
おそらく、アニメ製作側はどこの方言を使うかということを意識してセリフを読ませているわけではないと思われる。(原作はどうなっているかは知らない)
ほぼ全ての場面において訛りが出るキャラでない限り、方言の指導をつけるメリットがないことから、今回のリリナのセリフは近藤玲奈自身の感覚と、それを聞いた製作陣の感覚に依存した(聞いても違和感のないような)アクセントを採用しているものと考えられる。
つまり、今回のセリフにおける方言らしき単語とアクセントは別次元の話で、セリフはセリフで準備し、そこに適当な(テキトーな)アクセントをつけたのではないだろうか。
こうすれば、今回得られた結果を全て説明でき、現実において十分にあり得る結論となるだろう。
これ以上の考察は面倒なので、Vol.5はこれにておしまい。Vol.6をお楽しみに。(あ、ネタ考えなきゃ!)
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